IV.物資動員体系

1.戦時予備物資

ア.戦時予備物資の動員体系

 北朝鮮において戦時予備物資というのは、戦時に民間人が使う必需物資を備蓄することをいう。重要品目としては、食糧、塩、燃油(揮発油及び軽油)、タイヤ、自動車部品等を入れることができる。戦時予備物資の備蓄原則は、元来6ヶ月分と規定されているが、80年代以後、経済事情の悪化により現在、3ヶ月分程度と知られている。

 戦時予備物資の徴収及び保管管理は、国防委員会軍需動員総局において専担している。軍需動員総局は、元来労働党中央委員会直属機関だったが、92年、国防委員会が中央人民委員会から分離独立し、金正日が国防委員会委員長に就任し、軍需動員総局も第2経済委員会と共に国防委員会に所属変更を発表した。しかし、今も軍需動員総局は、有名無実化した国防委員会より労働党中央委員会軍事委員会と党軍事部の指導下にあるものと見るのが正しい。軍需動員総局の200〜300名程度である職員は、北朝鮮軍現役軍官(将校)で構成されており、人民武力部の各局に該当する職位編制を持っており、現在、北朝鮮軍次帥李鐘山が軍需動員総局長を務めている。軍需動員総局は、政務院委員会、部の4局(又は処)を通して、戦時予備物資を徴収する。

 戦時予備物資の生産、徴収のため、軍需動員総局は、毎年、徴収する戦時予備物資の徴収計画を立てて、政務院に送り、政務院は、委員会、部にこの計画を示達し、委員会、部は、徴収計画に従い4局(又は処)を通して、戦時予備物資の生産計画を立てて、傘下機関(量定事業所、製塩所及びその他の工場、企業所)において戦時予備物資を生産し、軍需動員総局が徴収するようにしている。戦時予備物資の生産及び徴収は、労働党中央委員会軍事委員会命令により実行されるため、軍需生産と同様に全ての民需用生産に優先する重要な事業と見られている。

イ.戦時予備物資の保管体系

 軍需動員総局は、各道に戦時予備物資管理所(民間人採用)を置き、傘下に「第○○号管理所」と命名された保管基地を作っており、ここで徴収した戦時予備物資を保管管理している。戦時予備物資は、「農事群が種子を食べて飢え死にするという言葉があるように、戦時予備物資は、飢え死にしても傷つけてはならない」という金日成の教示に従い、少しでも傷つけてはならない。

 最近、経済難が余りに深刻化し、金正日の指示により1〜2回、戦時予備物資を一部放出したことでも知られているが、今も戦時予備物資は、本格的に放出していないように見られ、万一放出したとしても翌年に無条件で補充するようにされている。このような戦時予備物資管理所(備蓄倉庫)は、北朝鮮各地の山間奥地に30余ヶ所以上あるものと知られており、代表的な戦時予備物資管理所の数ヶ所を見てみれば、次の通りである。

 慈江道前川郡古仁里所在第65号管理所、慈江道江界所在第67号管理所、平南道价川郡所在第53号管理所、咸鏡南道耀徳郡所在第23号管理所、咸鏡北道穏城郡所在第○○号管理所、咸鏡南道高原郡所在第○○号管理所等を含めることができる。

 このような戦時予備物資保管基地は、空襲と襲撃が困難な山間奥地に良く備えられた保管施設(備蓄倉庫)を作っておき、物資を保管、管理している。慈江道前川郡古仁里にある第65号管理所の場合、切り立った山奥に保管施設を作っておき、武装警備人員だけでも1個中隊を越え、3ヶ所の検問所を経て初めて出入りが可能なようにされている。外部人員がこのような保管基地に出入りしようとすれば、いくら身分が高くても1ヶ月前に軍需動員総局に出入申請を行い、出入証が発給される場合でも、限定された保管倉庫にだけ出入りが可能な位、警備が森厳である。

 1ヶ所の保管基地の管理人員だけでも70〜80名になり、常に長期保管対策を研究、実行している。食糧の場合、野積み(園頭幕形態の野積み)が基本で、その他の布と被服類の場合は、通風が良く建造するように石で築造した倉庫に保管する。保管状態が良好なために、食糧の場合、3〜4年、布と被服類の場合、7〜8年、10年も保管が可能である。

2.軍の戦闘予備物資

 軍の戦闘予備物資は、民間の政治予備物資と異なり、人民武力部兵器局と後方総局が別途に備蓄保管し、戦闘予備物資の備蓄量は、3ヶ月分である。人民武力部の該当局は、戦闘予備物資備蓄計画を別途に立て、毎年、計画に従い物資を徴収又は生産し、備蓄、管理する。軍の重要戦闘予備物資には、食糧、弾薬及び砲弾、燃油(油類)、軍服及び装具類等が属する。

 人民武力部の関連局は、このような予備物資の備蓄のため、別途に「第○○号管理所」と呼ばれる保管基地を山間奥地に建設して、備蓄、管理しており、有事の際、部隊の前進配置(移動)に従って一緒に動けるように指揮している。食糧の場合、やたらに長く保管できないために、年毎に糧穀を交替保管し、このような関係で北朝鮮の軍人は、日常的に数年ずつ黒い古米を供給されている。従って、北朝鮮軍に古米がそのまま供給されれば、戦闘予備物資をまだ定常的に備蓄していると知ることができる尺度となる。

3.戦時生産準備体系

ア.軍需産業現況

 北朝鮮は、6.25事変以後、立て続けに軍備増強に全力を傾けており、このため、北朝鮮経済は、自然に重工業優先政策に方向を取ることとなった。北朝鮮は、その間、重工業の優先的な発展を通して、軍需産業の基盤を継続拡大してきたが、1966年10月、第2次労働党代表者会において、「経済建設と国防建設を並進させることに対する」路線を打ち出し、1970年代初めには、軍需産業を専担する第2経済委員会という独特な機構まで新たに作り、今まで全ての産業に優先して軍需産業を発展させる政策を堅持している。金日成は、第2次労働党代表者会において、このように演説した。

 「多くの人的及び物的資源は、国防に回さなければならず、これは、我が国の経済発展を一定に遅延させないとは言えないだろう。しかし、我々は、人民経済の発展速度を少し調節してでも、祖国保衛に完璧を期するため、国防力を強化するのにより大きな力を回さなければならない」。これは、北朝鮮が民需経済を犠牲にしてでも、軍需産業を主とする重工業優先政策を推進する強力な対南赤化の野心をそのまま持ち出したものである。

 現在、北朝鮮の軍需工業は、第2経済圏と呼ばれる位、膨大に形成され、経済難が最悪に至った今日でも、航空機組立、潜水艦、ミサイルのような攻撃用武器を自主生産している。金日成は、1970年11月、労働党5次大会でも、「我々の国防力は、極めて大きく、高い代価を支払って築かれており、打ち明けて言えば、我々の国防費支出は、国と人口が小さいのに比し、余りに大きな負担となった・・・。しかし、今日に至っては、堅固な組立的国防工業基地が創設され、自主祖国防衛に必要な各種現代的武器と戦闘技術機材を作れるようになった」と演説することによって、軍需工業に過大な投資を行ったことを是認した。

 現在、北朝鮮の軍需工業は、小火器から航空機、潜水艦、ミサイルのような先端武器を自主生産できる水準にあり、一部最先端装備を除外した全ての武装装備を自主生産して武装しているのみならず、外国に輸出までしている。また、全国各地の数多くの軍需工業は、100%地下化され、一旦有事の際にも、そのまま生産を保障できるように要塞化している。

 軍需産業に従事する人員は、「軍需工場に勤務する労働者、技術者、事務員は、代を続けて軍需産業に従事しなければならない」という金日成の教示により、本人のみならず子女まで代を続けて軍需産業に従事している。彼らは、本人は勿論、その子女も軍徴集対象から免除され、従って、子女は、高等中学校を卒業すれば、自動的に軍需工場に配置されて働くことになる。これは、戦時状況でも同様に、戦時に軍需工場に勤務する労働者、技術者、事務員は、軍服務と同じように評価される。

イ.民間企業の戦時生産転換計画

 北朝鮮は、第2経済委員会と人民武力部傘下の専門軍需工場の外にも、政務院傘下の民需生産企業所にも軍需生産を専門とする「日用分工場」又は「日用職場」(軍需生産を専門とする分工場や職場の偽装名称)を設けて、軍需生産を行うようにしている。これらの民需生産企業所の「日用分工場」(又は職場)は、専門的に武器、装備の部品を生産し、軍需工場に送る役割をしている。

 北朝鮮がこのように民需生産企業所に軍需生産設備を設置し、軍需品を生産するようにしている理由は、多くの部品が要求される武器と装備を専門軍需工場で単独生産できないことも関連するが、重要なのは、民需生産企業所にあらかじめ軍需生産施設を備えておき、生産経験を積ませることによって、一旦戦争が勃発すれば、全体経済を迅速に軍需経済に転換しようとする意図から出発したものである。従って、北朝鮮の大多数の重要工場、企業所は、一旦有事の際には、そのような「日用分工場」を母体に最短時間内に軍需経済に転換できるようにされている。そして、重要な企業所の場合、「日用分工場」も全て地下化されており、戦時にも安全に生産を保障できるようにされている。

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最終更新日:2003/01/02

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